【概要報告】国際生物多様性の日オンラインユースカンファレンス

開催概要

  • 催事名:国際生物多様性の日オンラインユースカンファレンス 在来種と外来種と人との三角関係 ~解決のカギは自然の中に~
  • 日時:2020 年 5 月 22 日 19 時~21 時
  • 主催:Change Our Next Decade (COND)
  • 共催:国際自然保護連合日本委員会(IUCN-J)
  • 会場:オンライン(zoom)

2020 年 5 月 22 日(金)に Covid-19 の感染拡大を懸念し、Zoom を用いたオンライン形式にて「国際生物多様性の日オンラインユースカンファレンス 在来種と外来種と人との三角関係~解決のカギは自然の中に~」を開催いたしました。当日は、全国各地からユース15 名程度の方にご参加いただきました。

カンファレンスの概要

カンファレンスは下記のスケジュールに沿って行われました。まず、開会あいさつ、ZOOM の機能説明、カンファレンスの流れの 3 つを、司会である生物多様性ユースアンバサダー(以下アンバサダーと略記いたします)の川辺が行いました。続いて Change Our Next Decade(以下 COND と略記)の代表・矢動丸が COND の説明、アンバサダーの難波がカンファレンスの趣旨説明を行いました。ディスカッションの軸となる話題提供は、アンバサダーの小幡と佐々木が行いました。


まず小幡は「首都圏での野生動物管理とその解決策」という主題で、シカやイノシシをはじめとする野生動物による産業や人の生活圏への被害の増加を問題視し、現状行われている対策について解説しました。また、自身が所属する団体での経験を盛り込み、今後野生動物と人との共生のために講じるべき対策について、ジビエ産業の活性化とそれらの教育を様々な教育機関でしていくことだとしました。
次に佐々木から「身近な場所から考える絶滅危惧種と外来種」という主題で、身近な自然の中にも絶滅の危機に瀕している種がいるが、人間活動や外来種によってそれらの種を守ることは決して容易ではないことについて説明を行いました。その上で自身が関わっているビオトープ管理や、地域全体で自然保護をしている事例を出しながら、身近な自然の保護は直接の守り手だけでなく、地域住民全体の意識の高まりが必要だと指摘しました。

ディスカッションでは、最初に話題提供の内容を簡単にふりかえり、参加者に関連した問題点やその解決策について意見を促しました。「野生生物と人との関係性の課題と解決策について」をメインテーマにして、終盤に「解決に向けて私たちユースができること」について意見を出していただきました。時系列順にまとめると、まず「住んでいる場所が田舎で野生動物が都市圏よりも身近であるので共存方法を知りたい」という意見から始まり、野生生物と人との共存について「ゾーニングの必要性があるが、行政の人たちがあまり詳しくない」「クマが出る地域では、緩衝地域を設けることでうまく防除している自治体もある」などの意見が出ました。次に「千葉県野田市に、アメリカザリガニが非常に多く水草が減っている公園がある。水草だけでなく水棲生物全体に影響が出ていると考えられる」という意見から、外来種問題についての議論が非常に活発になりました。
初めは「アメリカザリガニは子どもに非常に人気があるが、外来種は本当にすべて駆除するという考え方でいいのか」「駆除は生態系を守るためには必要だが、駆除する人の精神面への影響も気になる」「そもそもどのように駆除しているのか」「殺処分する以外にも何か方法はないだろうか」など外来種の駆除の在り方や殺処分以外の駆除方法を考えました。実際に行われている方法を挙げた方もおり、「ザリガニは足でつぶすこともあるが、背ワタを抜くことで瞬時に処分できる」「北海道では外来種イベントでウチダザリガニを料理としてふるまっている」「哺乳類はガスや電気ショックで殺処分することもある」「捕獲したミシシッピアカミミガメを水族館で飼育している」「公園で来訪者に外来種を捕獲してもらい参加型の駆除をしている」といった事例が出されました。


次に「外来種を知らない人が、自然に勝手に(外来種を自然環境に)帰してしまう」「外来種の知識がない人にどのように普及していけばいいのか」といった外来種についての普及啓発や環境教育ついても大きなトピックとなりました。例えば、「特定外来種を運搬することは法律で禁じられているので周知していかなければいけない」「自然が少ないエリアでは生き物に興味を持つ人が少なく、開発が優先されている」「以前働いていたペットショップでは、店員の外来種管理の知識が足りていなかった。環境教育は子どもだけでなく、従業員教育としても大切なこと」などといった問題意識から、「外来種を専門に扱う飲食店があるといいのではないか」「自然観察をベースにした、子どもへの環境教育を行っている」「アメリカから流入したプロジェクトワイルドの一種である Growing Up WILD という手法がある」「少年自然の家で働いているが、保育士さんから環境教育をしてほしいという要望があった。需要は高まっている」といったアイデアや実際の普及現場のお話もいただきました。このテーマでは、参加者の皆さんが鳥獣被害になじみがなかったのか、総じて外来種についての意見が多く出されました。発言が少なければ話題提供者のアンバサダーに意見を聞くことも想定しましたが、参加者の発言が途切れることはなく、非常にアクティブなディスカッションになりました。


最後の 10 分程度で 2 つ目のテーマ「解決に向けて私たちユースができること」について数名の方に発言をいただきました。以下にまとめます。「身近な自然環境に注目すると、生き物に対して思いを持っていない人が多いと感じるが、私たちには自分たちの好きな生き物の魅力を発信していき、関心をもってもらうことができると思う」「農業や林業などを続けていくための人手不足が問題視されているが、若者が参入しやすい制度をつくることが必要ではないか。また自然保護活動に若者が関わりやすい環境も必要だと感じる」「若者は専門家ではない人が多いが、そういう人たちでもアクティビティの1つのとしてこれらの活動に加わっていくことが大事」「環境保全の思いを抱いている方に加え、抱いていない方も巻き込める取り組みが大事だと思うので、これから取り組んでいきたい」このように、現在問題とされていることは多いが、ユースとして少しでもこの状況を変えていきたいといった想いが伝わってきました。特に問題点に対する解決策だけでなく、魅力を発信していくという楽観的なアイデアは、生物多様性の保全という一見複雑でわかりにくいテーマを扱う際には忘れてはならないことではないかと思います。


最後に本日のディスカッションで出された意見を簡単にまとめて、閉会といたしました。オンラインでディスカッションを含めたイベントとしては、非常に多くの意見をいただくことができ、私たちも様々な立場のユースが考えていることを知る機会を設けることができてよかったと思います。事後アンケートでも、様々な地域に住む方の事例を聞くことができてよかったというご意見が多く見られました。このイベントで得たことを、今後の活動に生かしていきたいと考えています。

プログラムと当日の発表資料

19:00-19:10 開会あいさつ/本日の流れ 川辺太郎(生物多様性ユースアンバサダー/関東1)
19:10-19:15 主催団体 CONDの紹介 矢動丸琴子(Change Our Next Decade(COND)代表)
19:15-19-20 本日の趣旨説明 難波広樹(生物多様性ユースアンバサダー/関東5)
19:20-19:50 テーマに沿った話題提供 (各提供者 10 分程度の発表)
「首都圏での野生動物管理とその解決策」小幡成輝(生物多様性ユースアンバサダー/関東4)
「身近な場所から考える絶滅危惧種と外来種」佐々木春佳(生物多様性ユースアンバサダー/関東3)
19:50-20:50 ディスカッション:在来種と外来種と人との関係性をテーマに①3つの関係性の課題と解決策について②解決に向けて私たちユースができることは何か
20:50-21:00 まとめ/閉会

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